犬を無視することの意味 | 胴長屋犬健

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胴長屋犬健の島田です。

要求吠えをしたり、過剰な甘噛みをしてきたり、服を引っ張ったりしたときに、「無視してください」とアドバイスすることがあります。

愛犬がその場にいないものと思って、何をされても反応せず、無視するのです。

その場で無視することが難しい場合は、立ち去って(別の部屋に行くなどして)犬を独りぼっちにします。

「無視するなんて可哀想」という方もいるかもしれませんが、全然可哀想なことではありません。

「望ましくない行動をしていることに対する『罰』」ではなく、「(その行動をとっても)何も良いことは起きないことを『学習してもらう』」ことが目的で無視するからです。

例えば、オヤツを要求して吠えた結果、飼い主さんが静かにさせようとオヤツを与える(良いことが起きる)ことにより、「オヤツが欲しくなったら吠えれば良い」ということを『学習』してしまいます。

甘噛みした結果、飼い主さんが「痛ーい」などと反応することで、「噛むと飼い主さんが面白い行動をする(楽しい)」ということを学習し、余計に甘噛みするようになります。

ズボンの裾がひらひらしているのが面白くて、噛んで引っ張ったときに「ちょっとやめてよ~」などと、ワンちゃんをふりほどこうとして動いたりすれば、ますます楽しくなり、「服を引っ張ると楽しいことが起こる」と学習し、飼い主さんが目の前を通る度に飛びかかってくるようになるかもしれません。

そう、すべては『学習』なのです。

なので、ずっと無視するのではなく、「その行動だけを無視する」、つまり、

「やめて欲しい行動を取っているときは無視」
「やめて欲しい行動をやめたらかまってあげる」(望ましい行動を取っているときはかまってあげる)

これを繰り返すことで、ワンちゃんにどういう行動を取って欲しいかを伝える(ルールを教える)ことができます。

例えば、引っ張りっこをして遊んでいる時に、誤って人の手を強く噛んでしまった場合、そのまま遊びを続けてしまうと、手を噛んでも良いと学習してしまう可能性があります。

なので、手を噛まれた段階で遊びを中断し、一旦ワンちゃんを無視するようにします。(見ない、触らない、話しかけない)

ただし、そのまま遊びをやめてしまうと、「なぜ遊びが終わったのか」を学習してくれない可能性があります。

そこで少し無視した後で、(ワンちゃんの興奮が少しだけ冷めた頃合いを見計らって)遊びを再開し、また手を噛まれたらしばらく無視してから遊びを再開、噛まれなければ遊びを続ける、ということを繰り返します。

そうすることで、「手を噛むと楽しい遊びが終わってしまうんだな。噛まなければ続くんだな」ということにいずれ気付き、理解して、噛まないことを選択するようになっていきます。

ただ単に無視するだけではコミュニケーションを放棄しているだけですが、コミュニケーションの一環として無視することで、「しつけ」を行うわけです。

仔犬同士も遊びの中で同じように、「強く噛まれると痛い(嫌なことが起きる)」「強く噛むと遊びが終わってしまう(良いことが終わる)」ということを学習していき、徐々に噛み加減を覚えていきます。

ところが、人間の場合、要求吠えをしたり、噛んだりしたときに、つい「叱る」ことでやめさせようとしてしまいがちです。

ワンちゃんが「叱られた」と気付いてくれれば良いのですが、人間の叱り方はワンちゃんにとってわかりにくいことが多いので、(いずれ理解してくれるかもしれませんが)叱られてやめるようになるまでには時間がかかるでしょう。

甘噛みも、うまく叱れば(ワンちゃんがやめろと伝える方法を真似できれば)数回でやらなくなってくれますが、うまく伝えられないと、いつまで経ってもやめてくれないだけでなく、叱られていると理解できず、むしろそれが楽しくて余計に噛んでくる場合もあります。

最悪、お互いの関係性が悪化してしまいますので、叱って解決するのはやめておいた方が無難です。

基本的には、飼い主さんに対する望ましくない行動は無視すること、飼い主さん以外への望ましくない行動は阻止すること(させないこと)、そして、その状況で取ってもらいたい行動を教えて、繰り返し「ほめる」ことです。

とはいえ、実際にどうやって無視したら良いのか、どうやって阻止したら良いのか、行動を教えたら良いのかわからないかもしれません。

そういった方のために、私たちドッグトレーナーがいます。

ワンちゃんの行動で困っている場合は、胴長屋犬健まで気軽にご相談いただければと思います。

ちなみに、赤ちゃんの夜鳴きも『学習』によるものだそうです。

夜泣きをするからと言って、大人が反応してかまってしまうと、とりあえず夜になると泣くという学習をしてしまい、夜泣きが長引いてしまうわけです。

一度無視して放置すれば夜泣きは終わるので、欧米では一般的に赤ちゃんが夜泣いたとしても無視するのだそうです。

夜泣きと体調不良は違うので、その点は注意が必要ですが、夜泣きで精神的に疲弊しないようにするためにも、望ましくない行動は学習して欲しくないですね。(お互いのためにもなりませんから)

なお、飼い主さんがワンちゃんの行動を今のままで良いと思っていて、さほど周りにも迷惑がかかっていないのであれば、それはそれで問題ないと思います。

オヤツをあげれば満足して吠えなくなったり、噛まれて痛い思いをするのが飼い主さんだけだったり(他の人は噛まなかったり)、飼い主さんも周囲も困っていない状況で、飼い主さんもワンちゃんもハッピーならそれで十分でしょう。

その行動が、他人や社会に迷惑かどうか、飼い主さんやワンちゃんにとって安全・安心かどうかで判断して、特に問題ないと思えば、対処する必要はないのではないでしょうか。

甘噛みはやめさせるべきというトレーナーもいますが、私は上記の判断から、「噛み加減が適切なら甘噛みOK」と思っていますので、やめさせる必要はないと思います。

ワンちゃんに甘噛みされるのが好きなトレーナーも結構いるんですよ。(^_^)